2015年11月17日火曜日

西日本新聞寄稿

西日本新聞に日本語支援に関する記事が取り上げられました!ほおっておけない社会問題として、少しずつ認識され始めていると思います。

オンライン版

http://www.nishinippon.co.jp/nnp/oita/article/207495


あなたが、自分の意思とは関係なく、日本語が通じない見知らぬ国で暮らすことになった場合をちょっと想像してみてください。不安でいっぱいになりませんか。
別府市は、2000年の立命館アジア太平洋大学(APU)開学以来、外国人留学生の受け入れ、支援に積極的に取り組むことによって、留学生が住みやすく活動しやすい街づくりを進めてきました。
 しかし一方で限定された取り組みとなっているのが、両親の留学や就労などで来日することになった子どもたちへの支援です。両親やそのどちらかが外国出身者という外国にルーツを持つ子どもたち。中でも日本語指導が必要な児童、生徒に対する支援は限定的です。このような子どもたちは自分の意思で来日する留学生と違い、突然日本語しか通じない学校に入れられる場合が多いのです。
   ◇     ◇
 この問題に関心を持つようになったのは、私の娘が別府市立の小学校に入学したことがきっかけでした。この小学校にはこのような児童、生徒が比較的多く在籍しています。第2言語である日本語を日常的に使うことが多く、生活言語としての日本語は比較的容易に習得していきます。ところが、教科学習に必要な日本語、つまり学習言語としての日本語となるとなかなか習得が進まないため、学校で勉強についていくことが困難となります。
 また彼らの多くは、第1言語である母語が発達途上であるにもかかわらず、日本語の使用が急増することから、母語能力を急速に喪失してしまいます。最悪の場合、母語も日本語も読み書きが十分にできるレベルにまで到達させることができません。
   ◇     ◇
こうした問題に対応するため、今年6月、私自身を含めたAPU教員が中心となって研究プロジェクトを立ち上げました。
 このプロジェクトでは、別府市における日本語指導が必要な児童、生徒の支援の現状と課題を把握し、他の自治体の先進事例も参考にして、一人一人に応じたきめ細かい、持続可能な支援ができる仕組みを市に提案することを目指しています。
 国際化に伴って移動するのは大人だけではなく、子どももそうです。APUがある別府市では外国人留学生の存在に注目が集まりがちですが、外国にルーツを持つ子どもたちが不安や問題を抱えながら、日々を送っている現状を直視し、地域が一体となって彼らを支援していく必要があるのではないでしょうか。
    ◆    ◆
=2015/11/15付 西日本新聞朝刊=