2017年5月24日水曜日

ダブルリミテッド

国東市の安岐の郷という介護施設で週2回夜、一人親のご家庭の子どもたちが集まり、施設の方々とごはんを食べたり、宿題や、運動をしたりするという、とても温かい活動に出会いました。夜、こどもだけで留守番をして過ごすのと、週2回でも夜をこうして温かく過ごすのとでは、心の育ちがずいぶん変わってくるのではと思います。

その安岐の郷で、去年の10月から、月に1度のペースですがRくんと一緒に日本語の勉強をしています。「日本語の勉強」といっても、Rくんは日本生まれ。話していても日本語支援が必要なようには見えません。どちらかというと、お勉強が苦手な子、と思われてしまいそうです。でも、一緒に勉強してみれば、同じ年齢の子であれば知っているような語彙が極端に少ないこと、ひらがなやカタカナの特殊音が書きとれないこと、音読が難しいこと・・・明らかに、言語の問題が横たわっていることがわかります。こんなレッテルを貼るのは嫌ですが「ダブルリミテッド」と言わざるを得ないかもしれません。フィリピン人のお母さんに育てられたRくんですが、お母さんの国の言葉はわかりません。そして、日本語のつたないお母さんの元に育ったRくんは幼少期から日本語のシャワーを十分に浴びていないため、年齢に適した日本語の習得ができておらず、どの言語も発展途上という、いわゆる「バイリンガル」と正反対の状態。根幹になる言語が不安定な状態では、学校での学習で壁にぶつかるのはいわば当然のことでしょう・・・

月に1度だけの日本語教師の私にできることはなんでしょうか・・・おうちの方にRくんの現状を充分理解してもらい、長期的な対策をしていかなければいけないことを伝えること、Rくんのサポーターの先生方、学校に、どこでつまずいていているか、そして、言語的な支援が欠かせないことを伝えることくらいしか・・・

実際、Rくん自身、周りのお友達との学習力の差が学年があがるにつれ、大きくなっていることを感じているのはひしひしと感じます。しかし、プライドがじゃまをして、みんなの前で初期の日本語の学習を見られるのはたまらないという気持ちもひしひし感じます。今後日本語の力をつけていかねばならないことはもちろんですが、Rくんの自尊心を高めていく必要を感じています。なにかひとつでもいい、Rくんが、これなら負けないという何かに出会ってくれればと。