2023年12月20日水曜日

 来日1年になる中学3年のAちゃんが、こんなことを言っていました。

「先生は船みたい。広い海で泳いでいて、どうしたらいいかわからないとき、やってくる船。」

現在のこどもの日本語教育は、サブマージョン教育(消極的二言語教育)だと言われています。

【サブマージョン教育(消極的二言語教育)】

少数言語を母語とするこどもを多数派言語の学級にいれ、自然にその言語を習得することを期待する。目標は多数派言語話者への同化

(補習を伴うサブマージョン:多数派言語を第二言語として指導する/取り出し授業を行う)

サブマリン、潜水艦というと、語感のイメージが湧くでしょうか。日本に来日して、日本語がまったくわからない子どもたちにとって、日本の学校や教室が海だとしたら、海の中で、周りの子どもたちの泳ぎを見て学びとりなさい、という感じに近いかと。うまく真似して泳げない子はどうなるでしょうか?沈んでしまいます・・・

Aちゃんが、私を船に例えたこと、こどもの日本語教育の現状を捉えていることに、切ない気持ちになりました。船が必要ない教育スタイルになるようにできることはなんでしょうか。

複数言語の転移を促進する教授法は、世界各地で生まれています。その中でも

トランスランゲージング(トランスランゲージング教育)

複数言語話者が、自分が持つすべての言語レパートリーを場に応じて柔軟に使用すること。教育者が実践の中で、こどもたちの持つ言語レパートリーの使用を促進していく工夫を取り入れることで、こどもの全人的発達につながるのではと思います。

日本語を学ぶという、こどもだけに課題を突き付けるのではなく、周囲にいる教育者や周りのこどもたちの捉え方、アプローチの仕方も同時に変容していく必要があると改めて、感じます。Aちゃんのいう船がなくても安心してみんなで泳ぎながら成長していけるように。